カウンセリング0903
2週間ぶりのカウンセリング。
前回、新しく処方された「パロキセチン錠」の効果について質問された。
相変わらず動機と夜中に目が覚めてしまうことに悩まされていた。
薬は増やされることになった。
薬がどんどん増えていく。
安定剤、睡眠薬、うつ対策…
仕方ない。
独立して半年。
親との絶縁に加え、金銭的な問題、そこから派生する妻との緊張関係が僕を苦しめている。
今は薬に頼ってでも乗り切るしかない。
カウセリングでは、この2週間にあったことを話した。
僕は先日、おばに会いにいった。
そこで僕の父について聞いてみた。
父の実家はお店をやっていた。
父は4人兄弟の2番目で、唯一の男の子だった。
1番目の姉と、3番目の次女がずいぶんと店の手伝いをさせられたらしい。
3番目の次女が、会いにいったおば。
「働かられるのが当たり前だと思っていた」という。
「じゃあ、俺の親父は何してたの?」
「ずっと遊びに行っていた」
「なんで手伝えってなんなかったの?」
「そりゃー、大事な1人だけの男の子だもの!!甘やかされて育ったんだ」という。
『甘やかされて育った』。
なるほど。
僕はその話を聞いて、いろんなことが氷解した気がした。
僕は
「だからあんなにわがままで幼稚なのか…」と呟いた。
僕の父は、本当に何もできない人だった。
年度末までに提出しなければいけない報告書を、毎年6月ぐらいに提出していた。
毎年その時期に決まって追い込まれていた。
大した報告書ではなかった。
そもそも、県の外郭団体だから、緩い職場だった。
家では踏ん反り返っていた。
時に時事問題について社会批判を熱く語ることがあって家族を感心させた。
しかしそれは「週刊文春」の全くの受け売りなのだと、学生になって「週刊文春」を手に取るようになってから気が付いた。
無能な男だった。
僕は医者に
「父が甘やかされて育ったということがわかった」と話した。
医者は
「例えば具体的な例として?」
すぐに思いつくのは大した例ではなかったが、僕は
「例えば家族全員で外食する時、僕の意見を無視していつも父の意見に従わざるを得なかった」と話した。
医者は
「多くの場合、母親が父親をそうさせている」と話した。
父については、父の実家と僕の家からも近かったし、祖父母がとても可愛がってくれたので、どんな環境で育ったかは想像がつくし、聞き取り調査も可能だ。
しかし、母の実家は車で2時間程度の遠方にあり、年に2回程度しか行く機会がなかった。
ただ言えることは、母方の祖母には、僕は「母性」というものを全く感じなかったし、彼女になつくことはなかった。
可愛がってもらった記憶もない。
そのことを医者に話すと
「母性のない母親に育てられれば、母性のない母親になる」という。
さらに僕は質問した。
「母の兄が中一ぐらいで亡くなっている。その影響は考えられるか?」
「それは母がいくつぐらいのときだ?」
「小4か5くらいだと思います」
「それなら影響はほとんどない。もっと幼児期であれば影響はあっただろう」
「それでは、一人息子を亡くしたことで両親のもとで育った影響は考えられるか?」
「それはあるだろう。両親の動揺が影響している。悲しみに接している時間が長い分、精神的な成長が遅れている可能性は高い」
重ねて医者が聞いた。
「両親の夫婦関係はどうだった?」
「権威的で母を押さえつけていた父だが、僕が小学高学年の頃、母が爆発して関係が逆転した。母が強くなった」
「夫婦の関係が悪い中で育つとどうしても愛情不足で不安定になる」と言う。
そして続けた。
「戦争で自ら命を絶つ兵士は皆お母さんと言って死んでいった」。
偶然にも、その話を先日思い出していたところだった。
「先生、僕は全然その気持ちが理解できないんです」と言うと
「愛情が欠乏してるんだ。そうなると神経症になる」。
そうなのだ。
僕は神経症なのだ。
僕は神経症として生きてきたことを、この歳になってようやく理解したのだ。
きょうのカウンセリングで少し原因分析が進んだ。
甘やかされて育った父。
そのわがままを許した母。
でも実際は、母性のない母親に育てられ、自分は夫の幼稚さを受け入れるような母性は持ち合わせていなかった。
父のわがままを許しているようで、実際は裏でコントロールすることで乗り切っていた。
4人を産んだが、僕の両親は4人を育てるほどの父性も母性も持ち合わせていなかった。
4人兄弟の真ん中2人が神経症に陥った。
3番目の僕は、神経症ゆえ組織になじめず会社を辞めて独立した。
親を許せいない苦しさと、経済的な苦しみと戦い、うつ病になった。
人を殺せば国が罪を問うてくれる。
しかし、親が子供を無計画で産み、結果神経症に陥らせても誰も親を罰してくれない。
僕の苦しみは続く。
でも、向き合って分析を続けていけばきっと今より良い方向に迎えるはず。
この苦しみを自分の子供に引き継がないために。